2025年に開催される大阪・関西万博。その目玉のひとつとして開発が進められているものがあります。それは「空飛ぶクルマ」と呼ばれる乗り物です。神戸空港や淡路島と会場をつなぐものとして構想があり、2年後の開催が今から注目されています。
空飛ぶクルマといわれても、現時点では車が空を走っている姿をイメージできる人は少ないでしょう。強いていえば、映画のSFの世界であれば……と考える人がいるくらいではないでしょうか。
ところが、空飛ぶクルマはそう遠くない未来で実用化されるといわれています。世界中の企業が研究開発していて、日本でも空飛ぶクルマのプロジェクトに参入している企業があります。今回の記事では、大阪・関西万博での導入に向けた取り組みが着々と進められている空飛ぶクルマについて紹介するとともに、大阪・関西万博についてもあわせて紹介します。
大阪・関西万博とは?
大阪・関西万博とは、2025年4月13日(日)から10月13日(月)まで、大阪の夢洲(ゆめしま)で開催される国際博覧会です。大阪・関西万博というのは通称で、正式名称は「日本国際博覧会」といいます。
テーマは「いのち輝く未来社会のデザイン」、コンセプトは「People’s Living Lab(未来社会の実験場)」と発表されています。世界中の人々とアイデアを交換して、人類共通の課題解決のための新しいアイデアを創造する場となる予定です。
大阪・関西万博では、来場者が空飛ぶクルマを乗車体験できる予定となっています。空飛ぶクルマとは、いったいどのような乗り物なのでしょうか。
空飛ぶクルマとは?
空飛ぶクルマの明確な定義はありませんが、「電動垂直離着陸型無操縦者航空機」と経済産業省は称しています。「電動」であり、「滑走路なしで垂直離着陸」できて、「自動運転可能」であることが特徴です。
近い未来の実用化に向けて日本のみならず世界でも開発研究がなされていて、次世代の交通手段として注目を集めています。そして、機体・運航・インフラにかかるコストが大幅に削減できることや、人の移動や物流がより早くなることから「空の移動革命」とも呼ばれています。
大阪・関西万博における空飛ぶクルマの活用
大阪・関西万博では空飛ぶクルマを活用して、会場周辺を中心とする「遊覧飛行」と、会場と空港や大阪市内等を結ぶ「二地点間輸送」をおこないます。「大阪・関西万博×空飛ぶクルマ実装TF2021年度のとりまとめ」内で提案のあった遊覧、2地点間輸送の路線は以下の通りです。ただし、これは案であり確定したものではありません。
- 神戸市内との2地点間/遊覧
- 神戸空港との2地点間
- 伊丹空港との2地点間
- 大阪市内との2地点間/遊覧
- 京都、伊勢志摩等との2地点間
- 夢洲・大阪湾岸部との2地点間/遊覧
- 淡路島との2地点間/遊覧
- 関西空港との2地点間
また、2022年の内閣府の資料「空飛ぶクルマの大阪ベイエリア航路実現性の調査」によると、夢洲・大阪湾岸部の空飛ぶタクシーの離着陸場が「桜島」「大阪港」「夢洲」に設置されそうなことが確認できます。大阪・関西万博における空飛ぶクルマ商用化を基点とし、都市部や地方部への交通網拡大、救急輸送等における実運用・商用運航への展開が進んでいくでしょう。
空飛ぶクルマの商用化を大阪・関西万博でおこなう意義
空飛ぶクルマの開発は今や世界の各国で進められていますが、この大阪・関西万博で空飛ぶクルマの商用化を実現する意義はどこにあるのでしょうか。以下でそれを紹介します。
社会実装の後押しになる
世界の空飛ぶクルマの開発状況から推測するに、「機体の型式証明」という安全性の認証をクリアするものが出てくるのは、2025年頃とされています。機体メーカーや運航会社も、大阪・関西万博でのお披露目を当面の共通目標として動いています。大阪・関西万博後のユースケースに近い形で多くの来場者に空飛ぶクルマの体験価値を提供できれば、万博後の社会実装の後押しとなるでしょう。
社会受容性の向上
大阪・関西万博は日本全国のみならず、世界各国からの注目が集まります。ここで空飛ぶクルマの旅客輸送や自由な空の移動などを成功させて、空飛ぶクルマによって実現される社会像を発信することで、社会受容性を大きく向上するでしょう。
大阪・関西万博以降の空飛ぶクルマの課題
大阪・関西万博が開催されたあと、空飛ぶクルマは二次交通(飛行機で空港まで行き、それから都市や観光地を結ぶ)の利用が想定されます。それが進んでいくと次は都市間交通、最終的にはプライベートにおける自由な空移動という新しい価値提供がなされるでしょう。ただし、これらを実現していくためには課題が多く残されています。どのような課題が残されているのか、以下で紹介します。
技術開発
空飛ぶクルマの社会実装にあたってもっとも大事になってくるのは安全性です。機体の安全性やパイロットの育成など、国が主導となって検討していく必要があるでしょう。また、空飛ぶクルマは電動化が前提となっているので、より少ない電力で高容量の電源を確保するかも重要になります。また、機体の軽量化も課題となるでしょう。
インフラ整備
空飛ぶクルマもヘリコプターを離着陸させるときのようなヘリポートが必要となります。既存のヘリポートを転用できればよいですが、空飛ぶクルマのように常時利用できるようなものとして設計されていないため、空飛ぶクルマ専用のヘリポートである「vertiport(バーティポート)」の準備を進めていく必要があるでしょう。また、空飛ぶクルマは電動なので充電するための設備も必要です。そして、航空機の管制塔の役割を担うシステムを作っていくことも安全性を担保するために必要となります。
法整備・航空法の改正
2022年現在だと、空飛ぶクルマは航空法の規制対象になる可能性が高いと考えられます。航空法では機体の安全性や信頼性確保のため耐空証明が必要となりますが、空飛ぶクルマにも航空機やヘリコプターと同じレベルの耐空証明が求められるとなると、実用化に向けた研究開発の妨げになる可能性が出てきます。空飛ぶクルマを実用化するために、日本独自の法整備が必要となってくるでしょう。
社会受容性の向上
「空飛ぶクルマが実用化されても本当に安全に飛べるのだろか」など、このような不安な声や反対する声も出てくるでしょう。今まで想像すらしなかった未知なものに対して社会が受け入れるためには、どのようなメリットがあって実証実験などを通じて安全面にも問題がないことをアピールしていく必要があります。これは長い時間をかけて繰り返し丁寧におこなう必要があるでしょう。
まとめ
今回の記事では、大阪・関西万博を紹介するとともに、大阪・関西万博で商用化がされる予定である空飛ぶクルマについて紹介してきました。世界各国で空飛ぶクルマが研究開発されているなかで、日本政府もロードマップを作成して実用化に向けた取り組みをしています。今回の大阪・関西万博を契機にして、空飛ぶクルマの実用化に向けてさらに注目度が増すことが予想されます。今後の日本企業の取り組みにも注視して推移を見守っていきましょう。