空飛ぶクルマ実用化に向けて、日本では着々と準備が進んでいます。「空の移動革命に向けた官民協議会」がまとめた「空の移動革命に向けたロードマップ」によると、2025年開催予定の大阪・関西万博を皮切りに商用運航を本格化させる目標設定をしています。2030年代には路線の全国的な展開を目指す方針です。
ただし、空飛ぶクルマを実用化するためには、機体の安全性の基準や運航方式などさまざまな観点から新たな枠組みを設ける必要があるでしょう。そのなかのひとつが「ヘリポートの設置基準」です。将来的には空飛ぶクルマを商用利用するため、高層ビルの屋上に空飛ぶクルマ用のヘリポート(「Vertiport(バーティポート)」)を設置していくことが考えられます。また、自家用として空飛ぶクルマを利用しようと考える人向けにタワーマンションの屋上にも設置していくかもしれません。
現状はおもに「緊急離着陸場」または「緊急救助用スペース」として活用されている屋上等のヘリポートですが、高層ビルにおけるヘリポートの設置基準はどのようになっているのでしょうか。将来の展望とともに考えていきます。
ヘリポートとは?
ヘリポートとは、ヘリコプター専用の離着陸場所です。どこにでも好きな場所に設置できるものではなく、設置するためには航空局に申請をしなければいけません。また、ヘリコプターは航空法で許可された場所のみで離着陸ができて、それ以外の場所では離着陸できないのが原則です。
高層ビルにヘリポートが設置されている目的
高層ビルの屋上にヘリポートが設置されているおもな目的は、緊急時における救護活動や消防活動の円滑化にあります。万が一高層ビルで火災が起きてしまった場合、消防車のはしごでは高さの限界がありスムーズに作業が進められないでしょう。そのため、ヘリポートを設置しておけば、上空からヘリコプターを活用することで救護活動や消防活動を進められます。
高層ビルの屋上に設置されているヘリポートはおもに緊急時に使われるので、旅客用で使われることはほぼないのが現状です。
高層ビルのヘリポート設置基準
高層ビルのヘリポートについては、消防庁の「緊急離着場等設置指導基準」で設置基準が規定されています。
高さが100mを超える高層ビルは、緊急離着陸場の設置を推進しています。また、高さ31mを超えて100m未満の場合は、緊急離着陸場または緊急救助用スペースの設置指導がされています。
これはあくまで「設置するように指導している」という意味合いであり、設置義務はありません。そのため、高さ100mを超える高層ビルでも、屋上の広さや設備上の理由から緊急離着陸場が必ず設置されているわけではありません。
緊急離着陸場と緊急救助用スペースの違い
緊急離着陸場または緊急救助用スペースの違いについて、以下で紹介します。
緊急離着陸場
緊急離着陸場は「H」のマーク表記がされています。これはヘリポート(Heliport)の頭文字をとったもので、許可申請を受ければこの場所でヘリコプターの離着陸が可能になります。
ヘリコプターは約5トン以上になるので、この重さに耐えられてヘリコプターが離着陸するときに阻害するものがないことが条件になります。
緊急救助用スペース
緊急救助用スペースは「R」のマーク表記がされています。これはレスキュー(Rescue)の頭文字をとったもので、あくまでスペースであってヘリポートではないため、ヘリコプターは基本的にRマークの場所には着陸できません。そのため救護活動をする場合は、空中に浮かんだまま作業を進めることになります。
Vertiport(バーティポート)への転用は可能か
ここまで紹介したヘリポートは、空飛ぶクルマ用のヘリポートとされるVertiport(バーティポート)への転用は可能でしょうか。以下で紹介します。
Vertiport(バーティポート)とは
Vertiport(バーティポート)とは、空飛ぶクルマのような垂直離着陸可能な航空機が離着陸する飛行場のことを指します。垂直を意味する「Vertical」と空港「airport」の二語を組み合わせた造語です。
Vertiport(バーティポート)への転用が難しい理由
緊急離着陸場や緊急救助用スペースをVertiport(バーティポート)へ転用することは難しいでしょう。
まず、床面の強度問題が挙げられます。そもそも緊急離着陸場や緊急救助用スペースは、緊急時における救護活動や消防活動の円滑化のために作られたものです。反復した離着陸を想定して作られたものではないので、安全性が担保される可能性は未知数といえます。
そして、緊急離着陸場や緊急救助用スペースは利用者の動線確保が不十分であるといわざるをえないでしょう。繰り返しになりますが、あくまで緊急時に使用されるものであり、常時使用されるものとして想定されていません。ビルの設計段階であらかじめVertiport(バーティポート)として活用していくものだと決めていないと、転用したところで利用者は不便を感じてしまうでしょう。これでは空飛ぶクルマが普及するのが難しくなってしまいます。
このような理由で、緊急離着陸場や緊急救助用スペースをVertiport(バーティポート)へ転用することは難しいといえます。
まとめ
今回の記事では、高層ビルにおけるヘリポートの設置基準と将来展望について紹介してきました。現状の屋上等ヘリポートでは、空飛ぶクルマが実用化されたときにVertiport(バーティポート)へ転用するのが難しいと考えられます。なので、将来を見越して今からでもVertiport(バーティポート)として利用するためのスペースを設計・確保していく必要があるでしょう。
空飛ぶクルマの実用化に向けてまだまだ課題は山積みですが、日本のみならず世界のエンジニアたちが「クルマが空を飛ぶ時代」を実現するために尽力されています。近い未来に実現されることを期待して、今後の推移を見守っていきましょう。
株式会社アリラとは
私たちは空飛ぶ車社会の実現に向けて離発着帯(バーティポート(Virtiportと英語表記))の開発でインフラ面を支えます。
エアタクシーや物流ドローンの空の社会実現にはまだ程遠く、私たちはヘリポートをまずは開発し、日本国民が自由にヘリコプターでいけるようハードウェア開発とオンラインサイトを立ち上げヘリポートの自由化を目指します。
現状、ヘリポートはどこにあるのか知る手立てが一般人にはなく、航空会社の派閥の影響でヘリポート情報は解禁されていません。
その情報をオープンにして利用客の利便性向上に努めます。