空を自由に飛べる乗り物「空飛ぶクルマ」実用化に向けて、着々と準備が進んでいることはご存知でしょうか。例えば、大阪府は2025年に開催される日本国際博覧会(大阪・関西万博)で「空飛ぶクルマ」を実用化すべく、2023年2月にも大阪城公園で有人の実証飛行をすると発表しています。もしかしたら、将来的には一家に一台所有しているのも夢ではないといえる時代がやってくるのかもしれません。
ただし、空飛ぶクルマが実用化されるために残されている課題は山積みだといえます。そもそも、空飛ぶクルマを離着陸させるヘリポートが必要で、ヘリポートを個人で所有してよいのかもわからない人が多いはずでしょう。今回はヘリポートを個人所有するための課題について取り上げていきます。
そもそもヘリポートとは?
まずはヘリポートの定義を確認しておきます。
ヘリポートとは、ヘリコプター専用の離着陸場所です。ヘリコプターは、航空法で許可された場所以外では離着陸ができないのが原則です。(航空法第79条)。どこにでも設置してよいわけではなくて、交通アクセスや騒音など様々な課題を考慮し、利用目的に即した場所に設置されるべきものといえます。
ヘリポートの種類
公共用ヘリポート
公共用ヘリポートとは、常設で不特定多数のヘリコプターの離着陸及び運用の為に設置されたヘリポートです。
公共用ヘリポートを開設するには国土交通省の航空局に設置申請しなければいけません(航空法第38条第1項)。誰でも降り立てる場所に設置する必要があるので、個人または企業・団体が保有する屋上に設置することは難しいとされています。
非公共用ヘリポート
非公共ヘリポートとは、常設で特定のヘリコプターの離着陸及び運用の為に設置されたヘリポートです。
設置するためには、公共用ヘリポートのときの同様の設置申請をしなければいけません。もし、飛行ルート下に高層ビルなどが建ち飛行障害になった場合は、許可が取り消されることがあります。非公共ヘリポートは、設置者及び運営者が認めた人のみが使用できて、主に病院や各地の警察本部、消防機関などが使用しています。
飛行場外離着陸場
飛行場外離着陸場とは、航空局から許可を取って上記二つのヘリポート以外の場所に離着陸する臨時ヘリポートです。
本来はヘリポートを常設すべきですが、それを建設・維持するためにも莫大な費用がかかってしまいます。そのため、一定の条件を満たしていれば、許可を得ることで離着陸ができます。
ただし、病院屋上等の構築物上の離着陸帯の強度や構造に関しては「非公共用ヘリポート」と同等の基準で設置しなければいけません。
HマークとRマークの違い
上空から地上を撮影した航空写真を見て、飛行場や屋上ヘリポートに「Hマーク」と「Rマーク」があることに気づいた人は結構いるのではないでしょうか。これらのマークはどのような意味があり、どのように区別されているのかお伝えします。
Hマーク(緊急離着陸場)
Hマークは、ヘリポート(Heliport)の頭文字を取ったものです。許可申請を受ければ、この場所でのヘリコプターの離着陸が可能であることを意味します。
ヘリコプターは約5トン以上になるので、この重さに耐えられてヘリコプターが離着陸するときに阻害するものがない条件を満たした場所であれば、ヘリポートとして認可されHマークを付けられます。
Rマーク(緊急救助用スペース)
Rマークは、レスキュー(Rescue)の頭文字をとったものです。こちらはスペースであってヘリポートではないため、ヘリコプターは基本的にRマークの場所には着陸できません。
超高層ビルであったり、ビル自体の強度が弱かったりいろいろな問題があり離着陸ができないため、Rマークの場所でヘリコプターは着陸せず、空中に浮かんだまま救助する方法がとられます。
ヘリポートを個人で所有してよいのか
これから航空法などが整備されて、空飛ぶクルマを所有する人が出てくるかもしれません。所有するとなると色々な問題が出てきます。例えば、どこに収容すればいいのかだったり、どのようなスペースを用意すればよいのかなどです。
まずは、そもそもヘリポートを個人所有してもよいのかという問題ですが、きちんと手順さえ踏めば、ヘリポートを個人で所有しても問題ありません。知識がないと準備するのは難しいので、専門家の立ち合いのもとで申請などを代行している業者に頼むことも一つの手段でしょう。
ヘリコプターと空飛ぶクルマの違い
ヘリコプターと空飛ぶクルマはどちらも空を飛ぶ乗り物ですが、違いがいくつもありますので紹介します。
離着陸の飛行方式の違い
ヘリコプターは斜めに進入離脱するので、飛行障害物が多くてヘリポートを設置できる場所は少ないといえます。それに対して、空飛ぶクルマは垂直に進入離脱するので、ヘリコプターに比べると飛行障害物は少なく、設置できる場所も多いといえます。
着陸帯の条件の違い
ヘリコプターは着陸時のオートローテーション(エンジンが停止しても降下を続けることでメインローターを回転させ、安全に降下飛行を続ける状態)によって軟着陸するので、万が一のハードランディングのときでも衝撃が小さく済みます。
それに対して、空飛ぶクルマは着陸時のオートローテーションは効かないので、万が一のハードランディングのときは衝撃が大きくなります。
利用方法の違い(インフラ問題)
ヘリコプターはバスやタクシーのように他に運転手がいます。乗客を運んだらすぐに飛び立つので、パーキングスペースなどを準備する必要はありません。
それに対して、空飛ぶクルマは利用するとき以外は収容するスペースが必要だったり、パーキングスペースや充電設備等も必要になってきます。
Vertiport(バーティポート)設置について
Vertiport(バーティポート)とは垂直離着陸用飛行場のことで、垂直を意味する「Vertical」と空港「airport」の二語を合わせてできた造語です。あまり聞き慣れない用語ですが、空飛ぶクルマ実用化のためにはVertiport(バーティポート)が必要だといわれています。その理由を二つ紹介します。
安全性や快適性の確保
空飛ぶクルマもヘリコプターと同様に、離着陸のときには猛烈な強風が発生します。もし、着陸帯の周りにモノが落ちていたら突風で飛ばされて大変です。特にコンクリートのカケラなどが落ちて飛ばされたら大怪我に繋がります。
屋上ヘリポートの場合であれば、上から何かが落ちてきたとすれば大問題になりかねません。遮音壁としての役割も期待できるので、騒音対策にもなります。
パーキングスペースにも使える
空飛ぶクルマ実用化に向けた一つの問題が収容に関することです。所有してもどこかに移動しても、留めておく場所がなければ利用できません。
Vertiport(バーティポート)を用意すれば市街地でも空飛ぶクルマが利用できるようになるかもしれないし、個人で所有するにあたってもVertiport(バーティポート)を準備したほうがよいでしょう。
Vertiport(バーティポート)を作るのであれば、早く準備を始めたほうがよい理由
Vertiport(バーティポート)を作るのであれば、今からでも準備を始めたほうがよいといわれています。理由は、とにかく時間がかかるからです。
Vertiport(バーティポート)を都心部で作るのであれば大型ビルなどが考えられますが、大型ビルは建設計画から着工・完成まで10年以上がかかるといわれています。完成してしまったら構造変更することはほぼ不可能です。
既存のものをVertiport(バーティポート)として転用するにしても申請や工事が大変になるので、Vertiport(バーティポート)を設置する計画があるのなら、できる限り早く準備を進めるのがおすすめです。ヘリポートを個人で所有するにしても、Vertiport(バーティポート)についての情報は随時チェックするようにしましょう。
まとめ
今回の記事では、ヘリポートを個人で所有するための課題についてまとめてきました。ヘリポートを個人所有することは、きちんと手順を踏んでいれば問題ありません。ただし、現実的にはクリアしなければ問題点がかなり多いので、所有できる人はかなり限定されることが予想できます。こうなると、空飛ぶクルマが実用化されても利用できる人はほんの僅かになってしまうので普及するためにはまだまだ時間がかかるでしょう。
一家で一台、空飛ぶクルマを所有することは夢のまた夢かと考える人も多いでしょうが、実際に空中散策を楽しんでみるとその考えも少しは変わるかもしれません。実際にヘリコプターに乗って都心を上空から眺められるサービスを提供している会社も多くあるので、興味がある人は一度利用してみるのはいかがでしょうか。
株式会社アリラとは
私たちは空飛ぶ車社会の実現に向けて離発着帯(バーティポート(Virtiportと英語表記))の開発でインフラ面を支えます。
エアタクシーや物流ドローンの空の社会実現にはまだ程遠く、私たちはヘリポートをまずは開発し、日本国民が自由にヘリコプターでいけるようハードウェア開発とオンラインサイトを立ち上げヘリポートの自由化を目指します。
現状、ヘリポートはどこにあるのか知る手立てが一般人にはなく、航空会社の派閥の影響でヘリポート情報は解禁されていません。
その情報をオープンにして利用客の利便性向上に努めます。