1903年にライト兄弟が初の有人飛行を成功させてからもうすぐ120年。現在、「空飛ぶクルマ」が交通インフラに革命をもたらそうとしてます。経済産業省は2018年に、「空の移動革命に向けた官民協議会」を設置。「空飛ぶクルマ」の実用化に向けて検討が重ねられています。
そして、実用化の第一弾として、2025年に開催予定の大阪・関西万博において空飛ぶクルマの実装が計画されています。日本でも少しずつ認知や注目が高まり、次世代の交通インフラになる可能性は非常に高いと考えられていますが、実用化するには問題点が山積みです。
今回の記事では、問題点の一つである「免許」について取り上げます。もし、空飛ぶクルマを操縦するとしたら、どのような免許が必要なのでしょうか。
また、最近の空飛ぶクルマに関連する国の動きのひとつである「無人航空機の新制度」についても触れていきます。
空飛ぶクルマを操縦するために必要な免許とは?
もし、今後空飛ぶクルマの活用を図っていくのであれば、免許は必須となるでしょう。ただし、免許を取得するためにはどのレベルの知識や技術を要するかで、普及速度が変わると予測します。
現行の航空法のように、操縦資格の免許を取得するまでかなりの時間と労力を必要とするのでは、免許を取得できる人はかなり限られます。ただ、普通自動車第一種免許のように、誰でも取得しやすいものにしてしまうと、安全性の担保ができない可能性も出てきます。
なので、もし空飛ぶクルマを実用化するのであれば、現行の航空法よりも取得条件が緩和されて、かつ、運行の安全性が担保されるような仕組みづくりが必要でしょう。では、空飛ぶ車の免許取得する人が増えるためにはどうしたらよいでしょうか。
空飛ぶクルマの免許取得する人が増えるために必要なこと
免許取得の難易度を考える前に、どうしたら免許を取得しやすくできるかを考えるほうがよいでしょう。具体的には、「どうしたら空飛ぶクルマを安全に操縦できるか」ということです。いろいろと議論すべき箇所はありますが、今回は問題点を2つピックアップします。
離発着場所の問題
航空法第79条には「航空機は、陸上にあっては空港等以外の場所において離陸し、 又は着陸してはならない」 とあります。但し書きには「国土交通大臣の許可を得ることで、空港等以外の場所でも離着陸が可能」とあるものの、極めて限定されています。このままでは空飛ぶクルマの普及は見込めないでしょう。
現実的に考えても、高層建築物が多数ある都心部や、架線がたくさんあるような場所での離発着は禁止にすべきです。また、荒天時の運航や他の航空機等との接触が考えられる場所での離発着も禁止にすべきで、まだまだ問題点は山積みです。
飛行時の問題
仮に離発着場所の問題がクリアできたとしても、自由にどんな場所でも飛んでよいかというのは別問題です。他人が操縦する空飛ぶクルマに衝突することもあるかもしれないし、高層建築物や架線がある場所での飛行は危険です。また、他の航空機等と接触してしまえば、大惨事をもたらすこともありえます。
また、航空法第97条第1項には「航空機は、計器飛行方式により、航空交通管制圏若しくは航空交通情報圏に係る飛行場から出発し、又は航空交通管制区、航空交通管制圏若しくは航空交通情報圏を飛行しようとするときは、国土交通省令で定めるところにより国土交通大臣に飛行計画を通報し、その承認を受けなければならない。承認を受けた飛行計画を変更しようとするときも同様とする」とあります。このようなことを要求するようでは、空飛ぶクルマが普及することはないでしょう。
無人航空機の登録義務化について
空飛ぶクルマは将来的に無人での自動運転が想定されているということで、無人航空機の新制度について触れていきます。2022年6月20日より無人航空機の登録が義務化されました。2022年6月20日以降は、登録されていない100g以上の無人飛行機は飛行できません。また、2022年6月20日から100g以上の機体が、飛行の許可承認制度など航空法の規制対象となります。
無人航空機登録制度施行の背景には、以下のような事情があるといわれています。
- 事故発生したときなどの所有者把握のため
- 事故原因の究明や安全確保のため
- 安全上問題のある機体の登録を拒否し、安全を確保するため
飛行許可・承認制度の概要
航空法において、国土交通大臣の許可や承認が必要となる空域及び方法での飛行(特定飛行)をおこなう場合は、基本的に飛行許可・承認手続きが必要です。なお、適切な許可・承認を取得せずに無人航空機を飛行させるなどをした場合は、懲役又は罰金に科せられます。
特定飛行に該当する飛行
以下の空域を飛行する場合、飛行許可申請が必要です。
- 150m以上の上空
- 空港等の周辺
- 人口集中地区の上空
- 緊急用務空域
また、以下の方法で飛行する場合、飛行承認申請が必要です。
- 夜間での飛行
- 目視外での飛行
- 人または物件と距離を確保できない飛行
- 催し場所上空での飛行
- 危険物の輸送
- 物件の投下
カテゴリー概要
無人航空機の飛行形態については、リスクに応じて3つのカテゴリーに分類しています。リスクの高いものから「カテゴリーⅢ、Ⅱ、Ⅰ」に分類され、該当するカテゴリーに応じて手続きの要否が変わってきます。
カテゴリーⅢ | 特定飛行のうち、無人航空機の飛行経路下において立入管理措置を講じないでおこなう飛行(=第三者の上空で特定飛行する) |
カテゴリーⅡ | 特定飛行のうち、無人航空機の飛行経路下において立入管理措置を講じたうえでおこなう飛行(=第三者の上空を飛行しない) |
カテゴリーⅠ | 特定飛行に該当しない飛行 航空法上の飛行許可・承認手続きは不要 |
立入管理措置とは、無人航空機の飛行経路下において、第三者(無人航空機を飛行させる者及びこれを補助する者以外の者)の立入りを制限することです。
また、機体認証および操縦者技能証明の取得により、「カテゴリーⅡ」の飛行のうち一部で飛行許可・承認手続きが不要になる場合もあります。
無人航空機の新制度について
2022年12月5日から、無人航空機の新制度が開始されました。これによって、機体認証や無人航空機操縦者技能証明、運航にかかるルールが整備され、現行のレベル1〜3飛行に加えて、今まで禁止されていた第三者上空の補助者なし目視外飛行を指すレベル4飛行が可能となります。以下で詳しく紹介します。
レベル4飛行とは?
無人航空機の新制度ができたことで、レベル4飛行が可能となりました。以下で、レベル1〜4の飛行について紹介します。
レベル1飛行 | 目視内で操縦飛行例:空撮、橋梁点検 |
---|---|
レベル2飛行 | 目視内で自律飛行例:農薬散布、土木測量 |
レベル3飛行 | 無人地帯での目視外飛行例:輸送の実証実験 |
レベル4飛行 | 友人地帯での目視外飛行例:荷物配送、建設現場の測量 |
機体認証制度
機体認証とは、無人航空機の強度、構造及び性能について検査をおこない、機体の安全性を確保する認証制度のことです。この制度は、「型式認証」と「機体認証」の2つに区分されます。
型式認証
型式認証は、メーカー等が設計・製造する量産機を対象としています。型式認証を受けた型式の無人航空機は、機体認証の検査の全部または一部が省略されます。
第一種型式認証 | 第三者の上空で特定飛行をおこなうもの(カテゴリーⅢ)有効期間:3年(更新可能)国土交通省による検査 |
第二種型式認証 | 第三者の上空を飛行しないもの(カテゴリーⅡ)有効期間:3年(更新可能)登録検査機関による検査 |
機体認証
機体認証は、無人航空機の使用者が所有する機体一機ごとを対象としています。
第一種機体認証 | 第三者の上空で特定飛行をおこなうもの(カテゴリーⅢ)有効期間:1年(更新可能)国土交通省による検査 |
第二種機体認証 | 第三者の上空を飛行しないもの(カテゴリーⅡ)有効期間:3年(更新可能)登録検査機関による検査 |
無人航空機操縦技能証明
無人航空機操縦者技能証明とは、無人航空機を飛行させるために必要な技能(知識及び能力)を有することを証明する資格制度です。技能証明書の申請にあたって、以下の内容を選択します。
資格の区分 | ・一等無人航空機操縦士第三者の上空で特定飛行をおこなうもの(カテゴリーⅢ) ・二等無人航空機操縦士 第三者の上空を飛行しないもの(カテゴリーⅡ) |
無人航空機の種類 | マルチローター/飛行機/ヘリコプターいずれも最大離陸重量25kg未満 |
無人航空機の飛行方法 | 昼間飛行/目視内飛行 |
上記以外の無人航空機の種類、機体の重量、飛行方法以外で飛行させるには、限定解除する必要があります。技能証明の限定を解除するには、実地試験において限定解除に応じた試験を受験しなければいけません。
技能証明書の有効期限は3年となっています。登録更新講習機関の無人航空機更新講習を修了し、身体適性の基準を満たすことで、技能証明書を再度発行する更新が必要です。
運行ルール
運行ルールとは、無人航空機を飛行させるために必要な運航に係る各種制度です。無人航空機を飛行させるためには、以下の運航に係るルールの遵守が必要となります。
飛行計画の通報
事前に自らの飛行計画(飛行の日時、経路、高度など)を国土交通大臣に通報し、飛行計画がほかの無人航空機の飛行計画と重複しないようにします。飛行の許可・承認の申請手続きをおこなったあと、飛行計画の通報をしてから飛行させます。
飛行日誌の記載
以下の飛行日誌を備え、必要事項を漏れなく記載します。
- 飛行した内容を記録する「飛行記録」
- 飛行前点検などの結果を記録する「日常点検記録」
- 定期的な点検の結果や整備・改造内容を記録する「点検整備記録」
特定飛行をおこなう場合または無人航空機を整備・改造した場合は、遅滞なく飛行日誌へ記載しなければいけません。
事故・重大インシデントの報告
無人航空機に関する事故や重大インシデントに該当しそうな事案が発生した場合は、その日時、場所、事案の概要などの事故・重大インシデントの報告を国土交通大臣におこないます。おもに以下のような事案が該当します。
- 人の死傷
- 物件の破損
- 航空機との衝突または接触(衝突または接触のおそれがあったと認めたとき)
- 無人航空機の制御が不能となった事態
- 無人航空機が発火した事態
負傷者発生時の救護義務
負傷者が発生した場合、ただちに無人航空機の飛行を中止し、事故等の状況に応じ、危険や被害の拡大を防止するために必要な措置を講じる必要があります。
まとめ
今回は、空飛ぶクルマを操縦するためには、どんな免許が必要なのかについて紹介しました。
2023年に入ってから、国は運航や機体に関する新しい制度の概要を発表するなどして、着々と準備が進められているのを感じます。
現時点で、空飛ぶクルマが実用化されるには問題点が山積みで難しいでしょう。今後普及していくには、もっと多くの人に空飛ぶクルマのことを認知してもらい、実用化に向けて真剣に取り組んでいく必要があります。
興味を持つきっかけの一つとして、エアタクシーというサービスを提供している企業も増えてきました。実際にサービスを利用してみて、空飛ぶクルマをもっと身近なものとして考えられる人が増えれば、実用化される未来が早く訪れるかもしれません。
株式会社アリラとは
私たちは空飛ぶ車社会の実現に向けて離発着帯(バーティポート(Virtiportと英語表記))の開発でインフラ面を支えます。
エアタクシーや物流ドローンの空の社会実現にはまだ程遠く、私たちはヘリポートをまずは開発し、日本国民が自由にヘリコプターでいけるようハードウェア開発とオンラインサイトを立ち上げヘリポートの自由化を目指します。
現状、ヘリポートはどこにあるのか知る手立てが一般人にはなく、航空会社の派閥の影響でヘリポート情報は解禁されていません。
その情報をオープンにして利用客の利便性向上に努めます。