「タクシー」という言葉を聞いて連想するのは、多くの人が陸路を走っているタクシーではないでしょうか。駅前にはタクシー乗り場があり、大きな駅に行くとタクシー乗り場に列ができているのを見たことがある人は多いでしょう。
しかし、都市部では交通渋滞が起きていることは日常茶飯事であり、それに伴い時間が失われてしまうという問題があります。渋滞を解消するために道路の拡張や新設をしたり、地下道を建設したりとさまざまな手段が構築されてきました。ただし、整備費用・建設費用とともに莫大なものとなり、陸路で交通渋滞を解消するにも限界がやってきます。
そこで、新たな試みとして「ヘリタクシー」という空を飛ぶタクシーが作られています。まだまだ馴染みがなく、多くの人に認知されているものではありません。
今回の記事では、新たな空の移動手段として期待されている「ヘリタクシー」について詳しく紹介していきます。
- ヘリタクシーとは、どんな乗り物なのか?
- ヘリタクシーの魅力やメリット、デメリットはなにがあるのか?
- ヘリタクシーは今後日本でどのように広がっていくのか?
ヘリタクシーとは?
ヘリタクシーとは、ヘリコプターや「空飛ぶクルマ」を使用したタクシー(交通手段)です。都市部の渋滞を避けて移動する新しい交通手段として注目されています。
そして、空飛ぶクルマは次世代の航空モビリティとして期待されている乗り物です。
“空飛ぶクルマ”とは、「電動化、自動化といった航空技術や垂直離着陸などの運航形態によって実現される、利用しやすく持続可能な次世代の空の移動手段」である
引用:経済産業省:空飛ぶクルマ運用概念
ヘリタクシーのメリット
ヘリタクシーを利用することのメリットについて、以下で紹介します。
移動時間の削減
ヘリタクシーを利用することで、移動時間を削減できます。交通渋滞が多い陸路と違い、空路を使うことで目的地まで一直線で飛行できることがメリットです。交差点や信号などを気にせず最短距離で移動できるので、渋滞でイライラすることなく大きなストレスがかからなくなります。
確実性の担保
ヘリタクシーの移動は、移動時間の計算がしやすいというのがメリットです。
たとえば、道路交通が遮断されるような大規模災害が起きているときでも、ヘリタクシーであれば目的地まで円滑に到着できます。また、ドクターヘリのように事故現場などに迅速に向かえます。陸路のように時間が計算できないということがないので、確実性を担保できることが特徴です。
過疎地域や山間部へのアクセス向上
ヘリタクシーを使えば、過疎地域や山間部へのアクセスを向上できるというのがメリットです。
陸路で移動する場合は、どうしても地形に依存してしまいます。山を越えるにしても勾配を考慮した道路を作る必要があり、どうしても時間がかかります。トンネルを建設するにしても莫大な費用が必要です。
ヘリタクシーであれば、問題なくスムーズに移動できます。航続距離が伸びれば、数十km離れた離島への移動も可能となるでしょう。
環境保全
交通渋滞は、私たちの生活に多大な影響を与えます。
車の速度が4分の1になると燃料消費量は約2.5倍、環境への負荷が約2倍になるといわれています。走行速度40km/hと10km/hの車を比較した場合の環境への負荷がこちらです。
- NOx(窒素化合物):約1.9倍
- CO2(二酸化炭素):約1.8倍
- CO(一酸化炭素):約2.4倍
ヘリタクシーが使われることによって、自動車の排気量削減などの環境保全につながります。
ヘリタクシーのデメリット
ヘリタクシーを利用することにはデメリットも存在しますので、以下で紹介します。
万が一の事故が起きる危険性を拭いきれない
上空飛行しているだけに、万が一の事故が起きたときの被害は甚大なものとなってしまいます。自動運転システムを搭載し事故が起きないように設計しているとしても、リスクが漠然としている状況では社会受容性向上のかせとなってしまうでしょう。
利用することのメリットより、万が一の事故が起きる可能性があるというデメリットのほうが大きいと考えてしまうと広がっていきません。安全であるという理解を深めていく必要があります。
他の交通手段と比べて値段が高い
ヘリタクシーを利用すると、陸路を移動するときより値段が高くつきます。以下では、ヘリタクシーと陸路のタクシーで東京から浦賀(神奈川県横須賀市)まで移動した場合の比較を表でまとめました。
交通手段 | 料金(税込) | 時間 |
ヘリタクシー(AIROS Skyviewを参照) | 128,000円〜 | 30分 |
タクシー(NAVITIMEを参照) | 25,400円(予想料金) | 約2時間42分 |
ヘリタクシーを利用すれば時間は大幅に早くなるものの、値段はかなり高くなってしまいます。そのため、ヘリタクシーを利用する費用対効果に見合ったものが必要となるでしょう。
【まとめ】ヘリタクシーの今後
今回の記事では、ヘリタクシーについて詳しく紹介してきました。
今もヘリタクシー事業をおこなっている企業は多くありますが、今後も増えていくことが予想されます。ヘリタクシーを利用することによるメリットとデメリットがあるので、そのバランスを調整していくことが一つのポイントになりそうです。
大阪の『大宝タクシー株式会社』は、2025年に開催予定の大阪・関西万博に合わせてヘリタクシー運用を開始する予定です。以下のような料金体系を採用する予定とのことです。
- 初乗り:680円
- 以降10秒毎に250円を加算
ヘリタクシーが実用化されることで、現代における渋滞問題の解決策の一つになる可能性があります。今後の展開に注目していきましょう。