現実の移動手段として、実はそう遠くない将来に利用されようとしているもののひとつに「空飛ぶクルマ」があります。2025年3月から大阪の夢洲(ゆめしま)で開催される大阪・関西万博では商用利用される予定です。2022年現在においては、空の移動手段として思いつくのは航空機を除けばヘリコプターではないでしょうか。ヘリコプターはおもに以下のような利用がされています。
- 災害時の物資・人員輸送(医師/被害者など)
- 荷物配送
- 遊覧などのビジネス
- 観光地・空港アクセス
- 離島間交通
今後、空飛ぶクルマが実用化されれば、ヘリコプターにとって代わる存在になるかもしれません。そこで、今回の記事では空飛ぶクルマとヘリコプターを比較して、共通点と相違点を紹介します。また、空飛ぶクルマが実用化されたら私たちにとってどんなメリットがあるかについてもあわせて紹介します。
空飛ぶクルマとヘリコプターの共通点
空飛ぶクルマのことを「電動垂直離着陸型無操縦者航空機」と経済産業省は称していますが、明確な定義はありません。一般的には「電動垂直離着陸機(eVTOL(イーブイトール):electric vertical takeoff and landingaircraft」と呼ばれていて、ドローンを大きくして人間が乗れるようにしたものや、翼を持つタイプもあります。
一方で、ヘリコプターはギリシア語で「螺旋(らせん)」を意味する「helic」と、「翼」を意味する「opter」または「pteron」を組み合わせたものです。大きなローター(回転翼)を機体の上に取りつけ、エンジンで回して浮力をつけ地上滑走をせずに発着します。
どちらも人を輸送できることが共通点です。ただし、以下で紹介することは空飛ぶクルマとヘリコプターとの相違点になります。
空飛ぶクルマとヘリコプターの相違点
電動・整備費用・騒音
ヘリコプターの多くはエンジンを搭載していますが、空飛ぶクルマは電動です。そのため、ヘリコプターと比べると部品点数が少なく、整備費用が安く済みます。
また、電動を想定しているので騒音も比較的小さいといえるでしょう。垂直離着陸が可能なので、離着陸場所の自由度が高いことも特徴です。
操縦難易度
ヘリコプターの操縦は、高度な技術が必要でホバリングが難しいのが特徴です。一方で、空飛ぶクルマは自動操縦を想定しているので操縦士が不要で済み、運航費用が安く抑えられます。
空飛ぶクルマが実用化したら期待できること
空飛ぶクルマが実用化されるためには、課題がたくさん残っています。現実的に考えても、課題をひとつずつクリアしていかない限り、実用化されるのは難しいといえるでしょう。ただし、空飛ぶクルマはさまざまな方面での活躍を期待されているのも事実です。以下では、空飛ぶクルマが実用化したら期待できることやメリットについて紹介します。
新たな移動手段
過疎地域や離島などへの新しい輸送・移動手段として期待できます。陸路を選ぶとどうしても輸送コストがかかってしまい、離島地域のみ運送料がかかるケースも多くなっています。陸路を開拓するにしても、その建設費用は莫大になるでしょう。しかし、空飛ぶクルマであれば地形関係なく移動できるため、費用を抑えて過疎地域や離島へ移動できるようになります。
そして、山間部などは地形の影響を受けて時間をロスせざるを得ない場合もあるでしょう。しかし、空飛ぶクルマであれば出発地と目的地を点と点で移動できるので、移動距離や所要時間を短縮してよりスピーディに移動できるようになるでしょう。
緊急車両としての活用
緊急車両や救急医療方面での活躍が期待できます。都市部での交通事故や大規模災害が発生した場合には、現場に急行したくても渋滞が発生していたり、建物が崩れていて道路が遮断されていることもあるでしょう。そんなときに空飛ぶクルマであれば、地上の状況に影響されることなく現場に急行し、救急活動や支援物資を運搬できます。今でもヘリコプターでは「ドクターヘリ」などとして活用されていますが、それと同じような役割を担うことも期待できます。
新たなビジネス・観光資源
2023年現在でもヘリコプターを使った観光・遊覧ビジネスはありますが、空飛ぶクルマが導入されたらより一層手軽に空の移動を楽しめるようになるでしょう。日本人だけではなく、海外からの来日観光客向けにもサービスを提供できるので、新たなビジネス・観光資源になります。今まで味わったことのない経験・感動を味わえることでしょう。
空飛ぶクルマ実用化したときに考えうるデメリット
空飛ぶクルマが実用化された場合について紹介しましたが、メリットだけでなくデメリットや課題も残されています。どんなデメリットや課題があるか、以下で紹介します。
安全性への懸念
空飛ぶクルマの最大の懸念点は安全面でしょう。運航上何かに衝突する可能性があったり、墜落する危険性がほんの僅かでもあれば実用化できません。また、現在の航空法では空飛ぶクルマは規制の対象になってしまう可能性が高いといえます。空飛ぶクルマの実用化に向けての法整備などは時間がかかるので、できる限り早く進めていくべきでしょう。
騒音問題
エンジンを搭載しているヘリコプターに比べると、空飛ぶクルマは電動なので比較的騒音は小さめだといわれますが、それでもまだ騒音問題は依然解消されたとはいえません。都心部や住宅地で利用するとなると騒音問題は死活問題になりかねないので、騒音ができる限り小さい機体を作ったり、防音設備がされている離着陸スペースを準備していく必要があります。
まとめ
今回の記事では、空飛ぶクルマとヘリコプターの違いを中心に紹介しました。空飛ぶクルマが実用化されると、ヘリコプターが今まで担ってきた役割をそのまま引き継ぐ可能性も考えられます。ヘリコプターでは成し得なかったことを実現するためには、空飛ぶクルマが実用化できるように法整備をしたり離着陸スペースを準備したりするなどを今からでも計画していかなければいけません。課題はたくさんありますが、メリットも大きいので今後の動向に注目していきましょう。